#13:ミニマルなストライプスーツ(スラックス編)

前回はジャケットについての記事を書いたので今回はスラックスについて。

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スラックスの進化系

ご覧のとおり、無駄な装飾を削ぎ落とした非常にシンプルなデザインである。前回作ったスラックスを更に改良させた。

具体的な改良点
  • 前立てに角度をつけて腰に巻きつくように
  • 脚部の捻れを強くしてより3Dに
  • パンチェリーナを追加

分かりにくい部分ですが簡単に言うと、着用した時にストレスがかからないように心掛けた。螺旋階段のようなイメージで考えてもらうと分かりやすいかもしれない。見た目のデザインに関してはあまり変えてない。

進化したディテールたち

細さを追求したポケット

ポケットはジャケットの内ポケットと同様のもみ玉縁ポケット口布には裏地を使用した。これだけ細いと玉虫感が出ないのが残念だが。

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ちょっとしたポイントとして手が入りやすいように微妙にポケット口を緩やかにカーブさせた。両玉縁でもカーブできないことはないが、口幅が狭いもみ玉はこのような曲線にも対応しやすいのが特徴である。あくまでも生地の布目をずらさないように慎重に行う。

向こう布には生地のミミを使った。通常はパイピングやロックミシンで処理される箇所だが、ミミを使えばそういった手間は省け、ほつれる心配もないのでオススメ。生地の銘柄も織られているのでデザインポイントにもなるしね。

あえて留めない前あき

前あきは中心からオフセット(相対的に移動)してある。これには理由があり、前提としてこのスラックスはジッパーもなければボタンフライでもない。つまり、前あきの間を留めないが、天狗を幅広で作っているのと前あきがオフセットしてあることにより下着が見える心配はない。むしろファスナーやボタンの厚みがないのでスッキリして見え、適度な可動域があることにより快適に履くことが可能だ。

パンツェリーナ(パンツ内部の持ち出し)とホックで二重にウエストを固定するので安定感もある。腰で引っ掛けるようなイメージかな。腰履きに慣れてない人は初め違和感があるかもしれないが、慣れると腹部を締め付けやベルトの蒸れもないので快適な履き心地を実感していただけると思う。また、前カンの周囲は画像にあるように薄く仕上げてある。

吸い付くような腰裏

腰回りは腰裏を二重につけることで、ベルトがなくても腰にフィットするような構造にしてある。腰履きだとずれ落ちやすいのでそれを防ぐための措置としてこのような腰裏を導入した。

腰裏の素材は綿で作られたスレキを使ってある。綿の繊維は細かいのでそれゆえインナーに引っかかる効果を見込んでのことだ。マーベルトと呼ばれるシリコン製の滑り止めを使うという選択肢もあったが、吸着力が強いのでパンツまで脱げたら大変だと思い採用しなかった。腰裏は履いてしまえば見えない箇所だが、履き心地に大きな影響を持っているので重要である。

決して伸びないベルトレス

ベルトを取り除いたが、それで着心地が悪くなるようなことがあれば本末転倒である。今回は腰裏にプリーツを入れてるので動いたりしても腰にスレキが沿うので問題ない。内側が外側の足を引っ張ることがあってはならない。なので裏地(腰裏も含めて)は必ずゆとりを持って裁断する。結果として裏地がシワだらけになるがそれはいい服の証拠だ。

ベルトレスとは言っても腰芯はしっかり入れた。外側から見ればベルトのないデザインだが、内側にはベルトがある。正確には腰裏の下かな。画像ではラベンダー色の縞スレキに腰芯(ダック芯)を包んでステッチで叩いてある。正に縁の下の力持ちといった感じで、これがあるだけで変にウエストが伸びることも無いし、腰のラインに合わせた緩やかなカーブを演出する。

見えないけれどもある○○

謎のディテール「裾シック」を考える

裾シックはそこまで一般的ではないように思う。裾シックとは裾の前側にだけバイアスのスレキを当てる仕立てのことだ。一部のテーラーはやってるかもしれないが、私も本に載っていたので導入してみた。

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テーラリングの本の弱点でもあるが、なぜこのようになるのかといった理由はほとんど明記されていない。自分で考えろということだろうか。

私なりに裾シックの意味を考えてみた
  • モーニングカット(前が短く、後ろが長い裾=このスラックスもそうです)の際にどうしてもカーブがキツくなり縫い代をまつりにくくなるので、それを補助する目的
  • クリースライン(折り目)を出やすくする
  • 縫い代のアタリを出にくくする
  • 単に破けにくくするための補強
  • 足が引っかからないようにする

間違っているのもあるかもしれないが、ないよりあった方がいいような気もする。最も納得できるのは最初にあげた理由かな。このスラックスのモーニングカットはそこまでキツい傾斜じゃないので、あまりありがたみを感じなかった。しかし、切り替えずにアイロンだけで折った折り返し分をいせ込むにもウールの性質上限度があるので(限界突破した人は除く)そういったデザインの服を作るときは応用が効くと思う。

結局、モーニングカットはくせとり前提で進めていくものだ。私は大したくせとり技術がないせいもあって、前と後ろ身頃の縫い目を折り返し線のところまでにしておいてから縫い目が開くように工夫した。もはやくせとりに対する敗北宣言のように取られても異論はないが、なかなか綺麗に収まった。モーニングカットを大量生産する機会があれば取り入れても面白いかもしれない。

靴ずれが教えてくれるもの

この長方形の布は靴ずれ布と言い、某紳士服のスラックスでさえ取り入れるほどのベーシックなものだ。名前のとおり、裾の折り目が破けないようにするための補強布である(1mmほど折り目より出してある)。

とはいっても裾が破けるのはサイズが合ってないのが大きな要因であって、これに頼りすぎるのは良くないと思う。本来は裾を引きずるのでなければそう簡単には破けないものだからね。ただ、この靴ずれのように耳をデザインの一部として使う方法もある。破ける破けないにかかわらずどんな生地を使っているのか分かるのでデザインとしては面白いかも。

股下には見せたくないものがある

股下には棒シックと呼ばれる補強布をまつり付けている。前回のスラックスの記事でも触れたがボロ隠しの意味合いもある。ちゃんとしたサイズを選べていれば股下が擦れることはほとんどないので、これがなくても問題ないだろうというのをたまに思う。アイロンも掛けにくいしね。

そして、このように纏ってあるタイプはオーダーメイド仕様であって、一般の既製服だと楕円形の布に股下の縫い代の部分にちょんと糸ループで留めてあるものが多い。ブランドによって様々な形があるので覗いてみるのも勉強になる。

生地について

表地は前回のジャケットの記事で説明済みですのでぜひそちらを参照に。ここでは使用した副資材について簡潔にまとめておく。リンクを貼ってあるので、スラックスを作る人の参考になれば。

都市部にお住まいの方なら問屋街に行けば様々な副資材が手に入るが、地方に住んでるとそうはいかないです。あまり在庫を持ちたくないし。下記のショップは私がよくお世話になっており、最高級の副資材を購入できる。こういったニッチな素材は売られている所が限られていますから非常にありがたい。

腰回りを支える「腰芯」

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こちらはウエストベルトに使用した芯である。この芯を使った仕立ては非常に手間が掛かることから今ではあまり用いられないクラシックなものだ。現代では複数の材料を貼り合わせてある出来芯が主流となっている。

紳士服を意味する「縞スレキ」

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これを見れば「The紳士服」という感じのする縞スレキ。高級感があり、値段も他の無地のスレキに比べると高い。主にスラックスの腰裏に使われる。しかし、なぜこの縞スレキが腰裏に使われるようになったのかは分からない。紳士服には意外な理由で存在するものが多いので、この縞スレキも何かしらの面白い理由があるのだと思うけど。

ポケットに最適な「フランス綾のスレキ」

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フランス綾のスレキ。通常の平織スレキに比べて地合いが柔らかいので、肌に触れる部分に使用すると優しさを感じる。フランス綾とは詳しく調べると、太い綾目が2本以上、または太い綾と細い綾目が2本以上組み合わされて、はっきりと綾目の見えるものを言うそうである。

ところで、綾織といえばデニムが連想されるはずだ。デニム=強度があるということでスラックスのポケットなど使用頻度が高い箇所は綾織スレキの方が向いている。逆にジャケットのポケットなどそんなに使わないポケットであれば薄い平織スレキを使う方が賢明かもしれない。あくまで合理的に考えればだが。

サイズについて

ウエスト83cm
ヒップ122cm
ワタリ28cm
裾幅22cm
前ぐり23cm
股下77cm

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