4:ボーダーチェックのノーカラージャケット

最近テレビを見ていると、ノーカラーのジャケットやシャツを着ている人が多くなったような気がする。みなさんの周りではどうだろうか。実際、ノーカラージャケットはラペルやノッチの形状の流行に関与しないので、長く着ることが出来てサステナブルだ。

しかし、衿がないということでジャケット自体が無個性になりがちではある。よく言われることだが、シンプルと無個性は表裏一体だ。シンプルなデザインにしたいけどシンプル過ぎれば個性がなくなるというジレンマとの戦いの跡をこのジャケットから感じて頂けると幸い。また、ところどころでミシンは使わずに手で縫ってみた。

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ジャケットのあらまし

このジャケットは基本的にボタンを留めずに、開けたままで着ることを想定してある。ボタンが2つあるので一見するとダブルブレストに見えるが、あくまでアクセントとしての飾りボタンである。

推奨はしないがボタンをかけることもできる。(眠り穴かがりにすればよかったと思ったが後の祭りだった)。とはいえ、風が強い日などボタンをかけなければ前身頃がひっくり返り、非常に歩きにくいで。その対策として、糸ループとホックを配置した。自然と前が開く動きを途中で引っ掛けると綺麗なシルエットになる。

ディテールのレジュメ

ツライチなフロントライン

前端は前身頃と見返しの縫い代を先に折っておいてから「ツライチ」で合わせ、纏ってある(毛抜合せとも言う)。分かりにくいかもしれないが、つまりはミシンを使ってないということだ。

ミシンを使うと悲しいかな、生地が硬い表情をしてしまう。生地本来の良さを活かそうと思えば手間は掛かるが、手縫いをするのが最適解だ。仕上げに生地に埋もれてしまって見えないが、端の膨らみを抑えるために緩めに星止めをしてある。

レトロチックな水牛ボタン

ボタンはアンティーク加工が施された水牛ボタンを使用している。直径1.5cmと小ぶりなサイズだが、十分な存在感がある。

手作り感満載のボタンホール

鳩目付きボタンホールは手かがりで仕上げた。ミシンで縫われるボタンホールと較べて圧倒的な柔らかさが持ち味である。これでも以前と比べると上手くなった方だが、未だに手作り感はあるね。

贅沢な?大見返し

これは一般的に大見返しと呼ばれる仕立て方である。裏地を使わずに見返しを大きく取っている。裏地がつかないので見た目的に軽く、カーディガンのような着心地がする。ちなみに、半裏仕立ての方が重量的に軽いのは内緒。また、勘の良い人は気づいたかもしれないが、この服は通常のジャケットで使われる接着芯が使われていない完全芯なしジャケットだ(イタリア語ではセンツァインテルノと言うらしい)。

芯を使わないことには一長一短がある。それはペラペラに見えたり、耐久性に乏しかったりなど。しかし、うまく使えばそれを補って余りある魅力が芯なしにはある。肩肘張らずに着れる、日常に根差した服。そういった雰囲気を持たせるための1つの選択肢として、芯を使わないというのもありだよね。

作る方としては、芯がある方がより立体的なシルエットを形作ることができるので比較的楽ではある。芯なしの場合は骨組みがないまま家を建てるようなもので、繊細なアイロンワークと縫製技術が必要となる。

(大)衿ぐり見返し

衿ぐりの見返しは、首回りが安定するように大きめにカットした。また、余計な段差をつけたくないので前見返しとは渡しまつりという手法でドッキングしている。

縁の下の力持ち

力ボタンにはキャッツアイの黒蝶貝10mmをセレクトした。

布端を彩るパイピング

パイピングは裏地をカットして使用した。裏から見ても裁ち端が剥き出しではないのがポイント。また、シャンブレー(経糸と緯糸に異なる色を用いた平織物)なので見る角度により玉虫色に変化する。

裏地の構成
  • 【経糸】シルパール(ポリエステル)100%
  • 【緯糸】ベンベルグ(キュプラ)100%

珍しい構成だが、紳士服の裏地では一般的である。

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味のある袖口

袖口の裏地付けは安価な服(一部のプレタポルテも例外では無く)の場合、どんでん返しという手法が用いられる。どんでん返しとは表と裏を別々に縫い合わせてから、前端、衿の外回り、裾と続けてミシンをかけ、後ろ裾の一部を縫い残し、そこから表に返す仕立て方のことだ。どんでん返しは楽だが、後から補正したいときにミシン目を解くのが大変だし、何より裏地にとって必要不可欠なゆとりを十分に入れる事ができないと思う(裏地はいせにくいから)。

この袖裏は、手でゆとりを入れながら纏っている。それは見えない部分ではあるし、ミシンの方が綺麗に仕上がるのは間違いない。しかし、なんとも言えない「味」があるのは確か。この写真から分かるだろうか。

優れた服には、優れた袖裏あり

袖裏があるのとないのとでは、腕の通しやすさが天と地ほど違う。インナーにも依存するが、袖が引っ掛かるといくら良い服でも萎える人は少なくないだろう。今回使用した袖裏はそんな悩みを解消してくれる優れものだ。

使用した袖裏の説明

キュプラ素材で肌触りや滑りを良くしたオーダースーツ向けのサマー袖裏。夏用なので若干薄手のつくりで蒸れ難く、暑さを軽減してくれる。

袖裏のスペック
  • 【経糸・緯糸】ベンベルグ(キュプラ)
  • 【染・織】山梨県富士吉田市

キュプラは良い服に裏地として使われていることが多いので、ご存知の方も多いと思う。ただ、意外にどのようにして作られているのか知っている人は珍しいのではないだろうか。

実はあれって、元を辿ればコットンなんだよね。綿を取った後の実についた細かい繊維を集めて酸化銅アンモニア溶液に溶かし、ポンプで押し出したものがキュプラになる。少しも自然の恵みを無駄にしないエコの精神が感じられて素晴らしい。

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ちょびっとサイドベンツwithコイン

かなり短めのサイドベンツである。もはやノーベントと言っても良いかもしれない。裾は額縁仕立てで、その隙間にコインポケットを作った。このコインが重りとなることで、ベンツがストンと落ちて綺麗なシルエットを作り出す。

ただ、ここまで書いておいてアレだが、重さを残しておくなら額縁仕立てにする必要はない。というのも、額縁にする際に(重りとなる)余分な布をカットしなければならないからだ。なので、仕立て屋さんはわざわざ額縁にすることはほとんどなかった気がする。縫い代をカットしたら補正もできないし。見た目は綺麗なんだけどね。このコインポケットはもしものときのために、と覚えておいた方が良いかも。

味わい深いSacaiの生地

Sacaiの生地を運よく手に入れることができた。味わい深い生地感でアイリッシュなムードに少し表面がシャギー加工が施されてる。カジュアルというより綺麗な印象の織り地で、上質な手触りがSacaiらしい。表と裏で微妙に表情が異なる。

表地の繊維組成
  • ウール70%
  • ポリエステル17%
  • アルパカ12%
  • ポリウレタン1%

見たことのない繊維組成だわ。

サイズについて

肩幅43.5cm
身幅52cm
着丈69cm
袖丈62cm

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