8:オーソドックスなダークスーツ(ジャケット編)

今回製作したのはオーソドックスなダークスーツである。ジャケットとスラックスで分けて紹介していく。普段は服の基本をリノベートすることで自身のデザインへと昇華させるが、今回はその前の段階でデザインを考えた。

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ジャケットの骨組み

ぱっと見て分かるディテール
  • シングルブレスト
  • 2つボタン
  • ノッチトラペル
  • バルカポケット(胸ポケットの一種)
  • チェンジポケット
  • センターベント
  • 本あき(本切羽)

ジャケットとは面白いもので、上記の組み合わせを変えるだけで数え切れないほどの選択肢が生まれる。そして、あらかじめ縫い方やパターンが確立されている、目に見える部分のデザインを変えることは容易だ。そこで重要なのはディテールの名称ではなく、サイズ感とバランスだと思う。ノッチトラペルの太さを例にとると、細いほど若々しいイメージで、太ければクラシックな感じみたいなね。あくまでオーソドックスなスーツになるほど時代感が重要になるので、逆説的ですがヘテロドックスな服と言えるのではないだろうか。

意味のあるシワ

肩甲骨の辺りに見えるシワは良い洋服を語る上で重要な要素である。市販の服(吊るし)であればシワがないのが普通。なので、人間の体に平面な箇所はないので服を着れば当然シワが発生する。しかし、ある技法を使って人間の立体に合わせて服を作れば下記のような状態になる。

  • ハンガーに掛けている時:シワがある
  • 着用時:シワがない

これが理想。しかし、2Dの布を3Dにすることは技術的にかなり難しく、洋裁の永遠のテーマでもある。その3Dにする技術で最も高度な技術がくせとりと呼ばれるものだ(ウール限定)。

簡単にいうと、アイロンの熱と蒸気を使い布地を変えてしまう魔法のような技がくせとりだ。私はくせとりを本格的に習ったことがなく、完全に独学だが何度練習しても苦戦する最もやりがいのある行程でもある。くせとりは背中だけでなく、脇や腰、衿など立体的な箇所は全て行う。なので、当然のことだが膨大な時間と労力が必要で、大量生産品には見られない仕様だ。

ディテールのリスト

水牛とウールは最高の組み合わせ

たびたびこのブログで書いているが、ボタンホールは手縫いで行い、縫い止りにはかんぬき止めを施した。また、ボタンの素材は水牛(角)にした。スーツに合うボタンNo. 1は水牛で異論はないはず。

ところで、最近ではフェイクボタンの精度も恐ろしいほどに上がっているゆえ、格付けチェックではないが本物と偽物を間違えそうになることもある。本物を見分けるコツは天然素材ゆえの傷やムラを確かめることだ。偽物はちょっと綺麗すぎる(曖昧だが何となく分かるはず)。本物は良い意味で綺麗ではない。

オーソドックスなポケットたち

小銭を入れるための「チェンジポケット」

腰ポケットにはチェンジポケットを付けてみた。イギリスのスーツによく見られるポケットだね。最近のスーツでは物を入れられないフェイクポケットもあるが、これは実際に使うこともできる。また、実用の面だけでなく脚を長く見せる視覚効果もあるそうだが、真偽のほどは定かではない。

あると嬉しい「チケットポケット」

こちらは右前身頃の内ポケットになる一番上の細いポケットはチケットポケット(テケ)と呼ばれるものだ。昔は切符などを入れるのに重宝したそうだが、現代ではあってもなくても困らないポケット選手権があれば確実に入賞するポケットだと思う。

ただ、安定感があり中のものを取り出し易いので、工夫次第では最も便利なポケットに化ける可能性を秘めているのがこのテケだ。時代の変化とともに、ポケットですら変わらなければならないのかもしれない。通常であればチケットポケットは左身頃に付くが、珍しい左利き用として右身頃に付けてみた(私が左利きだからというのもある)。

時代の流れと共にある「シガーポケット」

こちらはシガー(タバコ)ポケットと呼ばれているものだ。ただ、それは昔の名残で現代社会の禁煙化の波の中、上記のチケットポケットとともに時代遅れになりつつある名称だろう。とは言え、このポケットは個人的には最も使い勝手が良いと思う。特にスマートフォンの取り出しには便利。

絶滅危惧種の「剣玉縁ポケット」

左胸だけフラップを付けた。どうしても落としたくないもの(パスポートなど)を入れるのに重宝するかと。また、ポケットの仕立ては剣玉縁と呼ばれるマニアックな手法で行った。個人的に大好きな仕立て方だ。

剣玉縁ポケットのメリット
  • 口布1枚で出来ることによるパターンの簡略化
  • 機械化できないので仕立て服にしかみられない
  • 単純に形がカワイイ

また、内ポケットに共通することだが、物が入れやすいようにスラント(斜め)気味にポケットを配置した。

見えない部分が大事

接着芯+αのハイブリッド

このジャケットの芯は主に接着芯を使用している。接着芯は毛芯と比べて立体感が出しにくいのが難点と言われているね。しかし、ラバン馬やプレスボールの上でしつけをしつつ、アイロン操作の後に星止めで止め付けることにより可能な限りの立体感を出した。それに加え、胸部分だけはバス毛芯を使用して張りを持たせてある。

手作りの肩パッド

肩パッドは自作した。ハ刺しと呼ばれる方法で、手で丸みを持たせつつ縫い付けていく。市販のものよりも肩へのハマり方が良いのが特徴。

サイズについて。

肩幅42cm
身幅48cm
着丈72cm
袖丈61cm

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