2.3:機械では作れない「もみ玉縁」ポケット作り

前回は表地のダーツを縫ったが、今回はその裏、見返しのポケットを作っていく。ポケット作りは普段あまり見れない工程だが、こういう作り方もあるということ知ってもらえれば。

@Contents

いかに細いポケットを作れるか

このジャケットのポケットは2つのみ。しかも、それは内ポケットにあるので外からは見えない仕様となっている。コンゴのサプールのように自分から裏地を見せびらかすのでない限り、誰の目からも触れられることのない寂しい存在がこの内ポケット。しかし、スーツの型は長年の歴史の中でビジネスマナーと共にある程度決まっているので、なかなか大っぴらに手を加えにくいのが実情ではないだろうか。個性を出すならこの見えない部分にこそ、裏勝り的にこだわるべきだと思う。

今回は何度かこのブログでも登場しているもみ玉縁という種類のポケットを作っていく。機械ではできないのと、手作業でやるにしても手間がかかるので市販の服には99.9%見られない。案外知られていないかもしれないので少し詳しく見ていこう。

1. ミシンが落ちるくらいに

口布(ポケットの口の部分)は裏地を使う。裏地を使った方が薄く仕上がるので内ポケットには裏地が使われることが多い。特にもみ玉の場合は裏地のような薄い生地でないと後々困ったことになる。まあ、分厚い布で試したことがないので確実には言えないが、イメージはできる。

紳士服付属 谷町テーラーパーツ
¥187 (2021/09/22 11:48時点 | 楽天市場調べ)

それで、それぞれの口布を折り曲げて突き合わせにし、その際をミシンで縫う。このとき大事なのが針が落ちるか落ちないかのギリギリを縫うということだ(1mm以内が理想)。この縫い線が歪んでしまうとポケット自体も直線ではなくいびつな形になってしまう。

写真にはないが縫い終わったら慎重にポケット口に切り込みを入れて口布を裏に返す。切るときにロータリーカッターだと誤って口布を切ってしまうかもしれないので、ハサミを使う方が安全かも。口布を返す際にアイロンをかけるだけでは綺麗に返らないので手で口布を揉み込みながら整える。これがもみ玉縁と呼ばれる所以だね。

2. 向こう布の必要性とは

次は向こう布に袋布を縫い付ける。ポケット口(口布)の向こうに見えるので「向こう」布と呼ぶ。

¥726 (2021/05/02 20:09時点 | Yahooショッピング調べ)

ポケットの中身の生地が見えてもおかしくないように、基本的にポケットの周りの生地と内側の生地を同じにしておく。内ポケットの向こう布は見えない箇所になるが、胸の厚みを出すためにも向こう布は表地を使った。

デザインポイントとして、ミミ(生地の端)に文字が織られていたので使ってみた。言われないと見ないであろうところに、こういったギミックを隠してみるのは楽しい。ただ、見た目だけでなく、この箇所にミミを使うのは非常に合理的であると思う。というのも、ミミはほつれないので裁ち端の処理をする必要がない。その分、薄く仕上げることができるし、何より処理がないので楽なんだよね。通常はロックミシンかパイピング、または三つ折り縫いで処理される。お手持ちの服に付いているポケットがどのように処理されているか興味があれば覗いてみて。

ミミは基本的に捨てられる存在だが、モッタイナイの精神で使い方を変えれば様々なところに活用できる。例えば、ウエストベルト、直線の縫い代、靴ずれなどに。注意点として、ミミは歪んでいることが多いので長めの使い方はしないほうが無難かも。

3. 袋布とそれを支える力布

次に2枚の袋布を重ねて縫い合わせて1枚の袋にしていく。特に注意することはない。ポケットと一緒に縫われているのはスレキをカットした力布(ストレートテープ)。これを袖と一緒に袖下に縫い付ける。この力布があることにより、内ポケットに物を入れても袖下で支えるため、ジャケット全体のシルエットが崩れにくくなる。

¥660 (2021/05/02 20:10時点 | Yahooショッピング調べ)

4. 手間はかかるが「裏地あとのせ」

まずは裏地を見返しに乗せて縦方向のゆとりを取りつつ、しつけ止めをしていく(右側)。そして、折り目のきわを裏地と同色の絹ミシン糸で纏る(左側)。中縫いをして裏地と見返しを縫い合わせる方法もあるが、今回は「裏地あとのせ」仕様だ。ただ一点、正式な裏地あとのせは見返し据えの後にするそうなのでこれはちょっと違うかもしれない。これはオリジナルだね。なぜ見返し据えの後に裏地を乗せるのが良いのかは考えてみてほしい。

裏地あとのせをするメリット
  • 裏地の交換がしやすい
  • 細いお台場を作れる
  • ハンドメイド感が出る
  • 鋭角のデザインも可能

デメリットはとにかく時間が掛かることだろう。さらに裏地にはプリーツクンニョ(三角形状の布、後で下に切り込みを入れて前肩処理をする)が入れてある。どちらも肩が前方に出やすくするためのものだ。

5. ヘタウマを目指した星止め

最後に裏地の際に1針ずつ丁寧に、絹縫い糸を使って星止めをしていく。既製服の場合は大抵はAMFステッチ(American Machine and Foundry)というものが入っている。星止め風ステッチと言ってもいいかもしれない、手縫いの星止めに似ている。見分けるのは簡単で、AMFステッチは綺麗すぎて何だか味気ない感じがする。対して、手縫いのステッチは不揃いで緩めにとめてある。この緩さが重要。ヘタウマという言葉が以前あったが、それに近いような気がするな。

これで内ポケット作りは完了。次回はジャケットの行方を左右する芯据えに入っていく。

続く。

To comment

@Contents
閉じる