現在、オーダーメイドのご依頼をいただきパーカーを製作しています。スーツやドレスのオーダーメイドに関して耳にすることは多いですが、オーダーメイドのパーカーはあまり聞きなれないかもしれません。
依頼者の方と相談しつつ進めており、この記事を書く段階では裁断まで終わりました。
備忘録的な感じで、作っている最中に感じたメモなどを改めて書き留めていきます。もし、服を制作してる方の参考になれば嬉しいです。
パーカーのパターン。
でき上がりがどうなるのかイメージして欲しいのであえてデザイン画は載せません!
このパターンからどのような服が生まれるのか想像してください。
パターンに色々と書き込んでありますがこれはボツになった製図用紙を流用したものです。紙は安くないので無駄にしないようにしています。自分で分かれば大丈夫なので問題ありません。
使用する生地について。

- 裏起毛ニット(ネイビー)
- 裏パイルニット(オレンジ)
- 裏パイルニット(ホワイト)
- 40 / スパンテレコ(オレンジ)
- 30 / スパンテレコ(ネイビー)
- 高密度タフタ
- 厚地のシンサレート
それぞれの生地について詳しく見ていきます!
①:裏起毛ニット(ネイビー)。
- 綿100%
- やや厚~厚(約2.15mm)
- ソフト・ストレッチ(巾方向)
- 巾150cm(ダブル幅)
裏起毛された厚地のニットです。私の持っているチャンピオンの赤タグよりも分厚い生地でかなりの保温性がありそうです。
意外とスウェット生地を売っているところがなくて探し出すのに苦労しました。結果として縫製工場の整理処分品を破格の値段で購入できたので良かったです。
②:裏パイルニット(オレンジ)。
- 綿100%
- やや厚~厚(約1.8mm)
- ソフト・ストレッチ(巾方向)
- 巾180cm(superワイド幅)
①と同じ業者より購入したものです。
裏起毛されていないですが、それでも十分な厚さがあります。オレンジの鮮やかさが特徴。
③:裏パイルニット(ホワイト)。
- 綿100%
- 生地幅:170cm巾
- 厚み:厚肉厚
- 伸縮性:中低
あまり使わない生地なので必要分だけを楽天で購入しました。送料が痛い。。
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④:40 / スパンテレコ(オレンジ)。
- 綿95%・ポリウレタン5%
- 40cm輪仕上げ
- テンション(伸縮性)高
- 色・シャッペスパン No.315
- てれこ
袖のリブに使う生地です。スパンテレコとはリブ編みの糸を抜いて畦状にしたニット生地のことを指します。
20 / 30 / 40と数字が頭につくスパンテレコですが、数字が大きくなるほど薄地になります。
パーカー程度だったら生地の厚さにもよりますが30から40で十分だと思います。
⑤:30 / スパンテレコ(ネイビー)。
- 綿100%
- 生地巾:42cm輪
- 日本製
- 生地厚:約0.6mm
- てれこ
こちらは裾に使うリブです。
④のスパンテレコとは異なり、30コーマにしてみました。違いは一見して分からない程度です。
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⑥:高密度タフタ。
- ポリエステル100%
- 生地幅:122cm
- 生地厚:約0.1mm
- 撥水加工
- 表面はマット、裏面はシレー加工(光沢)
- 耐水圧:550mm
ダウンジャケットにも用いられることもある平織りの高密度ポリエステルタフタです。今回はスウェットとダウンのハイブリットっぽい服を作る予定です。
また、シレー加工を施すことにより気密性を高め、結果的に生地の光沢を生み出しています。
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⑦:厚地のシンサレート。
- ポリエステル100%
- 生地幅:125cm
- 厚さ:約20mm
- 重さ:160g/m²
膨らみを持たせるためにシンサレートをチョイスしました。初めはダウンで作ってみようと思いましたが、専用の機材が必要なので諦めました。それにしてもシンサレートってすごい素材です。握るだけで発熱している感じがします。
マイクロファイバーの細い繊維が組み合わさり空気をたくさん含むので、とにかく断熱性・保温性に優れているのが特長。ウィンタースポーツウェアによく用いられているのを目にします。
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さて、使用する生地は以上です。次に副資材について説明します。
使用する副資材について。

⑧:ririのオープンファスナー。
- 品番:2216-73cm(M8)
- ムシ幅:8mm
- カラー:ベージュ系
- 生産国:スイス
今回使用するのはriri製のオープンファスナー。重量感もあり、これからのエイジングが楽しみな一品です。オークションで落札。
⑨〜⑫:使用する糸について。
今回はロックミシンの糸は別として4つの糸を使います。
近くに手芸屋が無いくらいの田舎に住んでいるので、イオンで糸を揃えました。
意外と?品揃えがいいのでいざと言う時には便利です:)。
種類/糸の太さ | 色 |
---|---|
⑨:シャッペスパン / #60 | #272 |
⑩:レジロン / #50 | #9 |
⑪:レジロン / #50 | #62 |
⑫:レジロン / #50 | 白#401 |
普段の縫製にはシャッペスパンや絹糸を使いますが、今回はニットなので伸縮性のあるレジロンを使用します。
生地に合わせて糸が伸びないと切れてしまいます。裁ち端が見える箇所に関してはロックミシンを使用する予定です。
スウェットの縮絨。
写真を撮り忘れたのですが、縮絨(水通し)もちゃんと行いました。
洗濯したら縮む可能性のある布地はあらかじめ縮ませておかないといけません。特にスウェットはかなり縮みます。
縮み率を考慮して大きめに作ることもできますが、小ロットの生産だったら無難に水につける方法がいいと思います。
- ニット生地はかなり水を吸うので脱水機にかける
- 干す時に伸びやすいのであらかじめ小分けにしておくと良い
- 乾きにくいので晴れた日にする
分厚い生地の裁断。

厚地の裁断はとても大変です。
間違っても裁断ばさみで2枚いっぺんに切らないで下さい。最悪の場合、はさみの噛み合わせが悪くなるかもしれません。
結局、ロータリーカッターで裁断したのですが力が要ります。裁断が終わった後は、ヘトヘトでした。
そして忘れてはいけないのがコロコロ。パイル地を裁断すると糸くずが半端なく発生するので裁断を開始する前にコロコロの準備をお忘れなく。
リバースウィーブへのリスペクト。
今回はチャンピオンのリバースウィーブを意識した裁断方法を取りました。
まずリバースウィーブ とは、
1934年誕生以来、スウェットシャツのパイオニアとして広く愛され続けている、Championの不朽の定番。 スウェットが縦方向に縮むのを軽減するために、本来縦に使われている生地を横方向に使用。 この編み生地の縦と横を逆にするという意味から「リバースウィーブ®」と名付けられた。
引用元:championusa.jp
つまり、布地を90°回転させただけです。それだけですが、洗濯した後にその凄さが分かります。
洗濯、乾燥後は横に縮むことによりフィット感が向上します。また、縦に縮みにくいので着丈のバランスが崩れることもありません。
布地は必ずしも縦に通す必要はないということです。
今回は以上になります。早速ですが縫製作業に入っていきます。